日経新聞の記事で「競争戦略」についてコンパクトなまとめが書いてありましたので、ご紹介するとともに基本的な考え方を整理したいと思います。
日経新聞(1月17日)の西条都夫編集委員の記事の要約
1. 経営者の多くは「事業戦略」「競争戦略」という言葉をあいまいに使っている。売上・利益の目標自体は戦略ではない。
2. 戦略とは「価値ある独自性」の追求のこと。横並びから脱し、他では提供できない価値を顧客に届けることだ。
3. 収益力の源泉となるユニークさを実現する手立てはいろいろある。しかし、最終的な目的地は独自性の確立にある。その実現に向けて青写真を描き、旗を振るのが経営者の役割。
4. 例えばベビー用品大手のピジョンは15%超の高い営業利益率を誇る。同社の原動力は「生後18か月までの赤ちゃん」に的を絞ったことにある。この年齢の赤ちゃんの哺乳に関わるニーズは万国共通。このニーズに対して「いい哺乳器」を開発できれば世界中で通用する。少子化の日本ではなく海外での売上を伸ばしている。
5. ピジョンのように「何をするか」が明確になれば「何をしないか」もはっきりする。ベビー服は哺乳器よりもはるかに市場が大きいが、技術による差別化が難しく、消費者の好みも違うので参入しない方針を選んでいる。
6. ピジョンには最初から明確な戦略があったわけではないが、多くの試行錯誤の結果として現在の戦略が導き出されている。
7. 「工場向けのアマゾン・ドット・コム」の異名のあるミスミ・グループの場合、けた違いに多い取扱品目を用意し、多様な注文に素早く届けるサプライ・チェーンを整えたことで競争優位を築き上げた。本来、利が薄いはずの中間流通と言う業態でありながら10%を超える営業利益率を誇るのは同社の戦略の勝利。
8. あなたの会社に「価値ある独自性」はあるだろうか。
記事のタイトルの割には競争戦略の解説があまりありません。競争戦略はマイケル・ポーターの提起した考え方なので、以下にその概要をまとめておきます。
競争戦略とは「業界」において収益性の高い独自性のあるポジションを築き、競争優位を確保することです。
「業界」は地理的範囲、提供価値の類似性の二つの視点で個別・具体的に考える必要があります。
地理的範囲とはターゲット顧客のいる範囲のことです。また、提供価値は製品サービスそのものではなく、顧客の課題に対する解決策の提案のことです。一つの企業が複数の価値提供を行っている場合も良くあります。
業界内での独自性のあるポジションは他社とは異なる活動の組み合わせによって得られます。こうした試行錯誤を通じて活動の調整を行うことを「フィット」と言います。
試行錯誤には軸となる基本方針に対する一貫性が必要です。
また、独自性とは顧客から見て意味のある違いがあることです。その結果としてライバル社と違った価値提案になるわけです。ライバルではなく顧客ニーズに注目することが独自性追求のポイントです。
そして差別化とは独自性があって、しかも高価格(もしくは高い利益)が得られることです。独自性があっても利益が上がらない状態であれば差別化の失敗です。
独自性は差別化の前提という位置づけになります。独自性戦略といわず、差別化戦略という理由は、利益がなければ事業が成功したといえないからです。