浅沼宏和ブログ

2017.02.17更新

原理原則を明らかにし、それに基づいて実務的課題を考えるのが私の仕事のスタイルです。ですから特に言葉や用語の意味にはこだわりを持っています。

例えば「教育」という言葉があります。

私は企業研修を良く行いますが、企業研修とは一言で言えば「期限付きの教育」です。すると「教育」とは何かが問題になります。

例えば、「教育」「学校教育」「教育訓練」「教育指導」という4つの用語の「教育」という言葉は同じ意味でしょうか?私は違うと思います。

簡単に違いを示すと次の通りです。

教育 ⇒教え育むこと (辞書的な意味)
学校教育の「教育」 ⇒法律の定め・文科省の方針などに準拠した具体的な実践
教育訓練の「教育」 ⇒専門知識の習得 cf.訓練とは技能・スキルの習得
教育指導の「教育」 ⇒「自立」させること cf.指導はルールや型に従わせること

このように同じ教育という用語が状況によって意味を変えます。言葉は状況に応じた意味を意識しながらできるだけ正確に使うべきだと思います。
例えば、一般的に「指導者」と言う場合、上記の教育と指導の両方を行うイメージになります。つまり指導にも場合分けした意味の定義が必要になります。

私が企業研修を行う場合、「教育指導」の「教育」という定義で考えています。
つまり研修の成果は「自立」になります。

では、「自立」はどのような意味になるか?私は「自ら考えて行動すること」と定義しています。

私はマネジメントを「成果を目指して行動する」と定義していますから、自立はマネジメントの基礎になります。

では「自ら考え行動する」の「考える」とは何でしょうか?これも明確にされないままに使われる言葉です。

それを明確にするために「考える」と「悩む」の違いを定義してみました。

考える ⇒多様な視点によって問題の定義・解決を行うこと
悩む  ⇒視点がないため神経は使っているが思考が働いていない状態

つまり、「考える」とは紙に書きだしたり、口にすることができる行為です。

たとえば研修で「○○はどう思いますか?」といった時に「全く思いつきません」とか「見当もつきません」という人がいますが、それを「考えていない」状態と定義します。

すると考えるためには多様な視点を持つこと、語彙力を高めることが重要だという結論になります。また言葉が精密であるほどものの見方が具体的になり、行動につなげやすくなります。

そこでビジネスシーンで使用されるごく当たり前の言葉をきちんと定義することが大事だということです。

研修が自立を目指すものであるならば、考えるための切り口、つまり仕事に直結した具体的な視点をできる限り伝え、それで複雑な現象を「考えて」もらうことが良いと思っています。

視点とはいわば「ものの見方」です。視点が変われば行動が変わります。行動が変われば結果も変わってくると思います。

言葉の定義は人それぞれです。上記の意味と違う定義を与えている人もいると思いますが、それはそれでその人にとって正しい定義です。

社会的概念に正解はありませんが、有用性が高いものがより優れているというのが基準です。これを「理論の説明能力」といいます。定義は一番小さな「理論」です。

成果が出ているなら定義の修正は必要ありませんが、より大きな成果が出る物の見方を常に追求する必要があります。

投稿者: 株式会社TMAコンサルティング

  • 各種お問い合わせ
  • 053-473-4111