デザイン思考の抄録第三弾です。ここではデザイン思考を実践するための組織の原則をまとめます。
ティム・ブラウン著『デザイン思考が世界を変える』抄録(3)
デザイン思考を実践するための組織の原則
1. スタートから関わる:デザイン思考は発散的思考に始まる。選択肢の幅を狭めるのではなく、あえて広げようとする。だからR&D活動の初期段階からデザイン思考家を戦略的マーケティングの意思決定に参加させるべき。デザイン思考家は上流と下流の橋渡しを行う役割を担う。
2. 人間中心のアプローチを尊重:デザイン思考は統合的アプローチだが人間中心の視点を持つことが大切。人間に焦点を合わせることで画期的なアイディアを生み出し、受け入れられる市場を見つけやすくなる。最初に行うべきことはイノベーション活動を行う者と対象となる顧客の距離を縮めること。膨大なデータは現場に行くことの代わりにはならない。
3. 早めに何度も失敗する:最初のプロトタイプ製作の速さはイノベーション文化の活力を示す。早い段階で失敗し、それを学習する限り、失敗は悪いことではない。安価で荒削りなプロトタイプ製作を素早く行うことが適切な創造プロセス。しかし、プロトタイプは社内ではなく対象顧客によって試されるべき。プロトタイプは検証可能でなければならないが実物である必要はない。形式にこだわる必要はない。
4. プロの手を借りる:組織の外に目を向けてイノベーションの機会を拡大することがよいこともある。顧客、新規パートナー、各種プロフェッショナルとの共同作業で新たな機会が見つかるかもしれない。また意外な方法で世界に向き合う極端な人々に出会いインスピレーションや洞察を得ることも重要。彼らは既存顧客の基盤に隠れがちな問題を明らかにしてくれる。
5. インスピレーションを共有する:生産性向上のためだけに社内ネットワークを活用するのではなく、「着想」に役立てる方法を考えるべき時が来ている。ネットの普及で人と人が直接顔を合わせることの価値が見落とされがちになっているが、それは間違い。一日の終わりに目に見える成果が得られるようなネットワークのあり方を考えるべき。
6. 大小のプロジェクトを織り交ぜる:イノベーションは「数撃てば当たる」と捉えるべきもので多種多様なアプローチが必要。短期的漸進的なものから長期的・革新的なものまで多様なアイディアのポートフォリオを管理するべき。活動の中心は漸進的アイディアの探求になるが、革新的アイディアにも目を向けなければ不意打ちを食らう恐れがある。
7. イノベーションのペースに合わせて予算を組む:デザイン思考にはハイペース、乱雑、無秩序と言う特徴がある。だから通常の予算サイクルや社内手続は足かせになる。予算配分を機械的に行うのではなく、柔軟に資金投入ができるようにするべきだ。
8. 才能の発掘にあらゆる手を尽くす:デザイン思考家は常に不足している。プロトタイプ製作が得意そうな人、チーム作業で力を発揮しそうな人を社内に見つけ、面白そうなプロジェクトに早い段階から関わらせるようにするべき。
9. サイクルに合わせてデザインする:デザインのプロジェクトは時間がかかる。中心的なメンバーがプロジェクト全体を遂行できるように人事に配慮する必要がある。
(つづく)