「管理」とは「逸脱・例外を見つけて正しくする」という意味です。適切な管理を行うためには検証と妥当性確認の違いを知っておくとよいでしょう。
「検証(verification)」とは「仕事が適切に行われているかを証拠に基づいて確かめること」です。正確性の高い確認作業と考えればわかりやすいでしょう。つまり、検証とは仕事が正しく行われたのかを確かめることなのです。そのためには明確な基準が必要です。マニュアル、設計図、チェックリストのような基準がなければ検証はできないのです。
これに対して「妥当性の確認(validation)」とは「仕事が本来の目的を達成できるように適切に設計されているかを証拠に基づいて確かめる」ことです。仕事の目的やプロセスが適切に設計されていなければ、仕事の管理自体が無意味になります。妥当性の確認とはそもそも仕事が正しいのかを確かめることなのです。仕事自体が正しくなければすべての努力がムダになります。
正しく仕事をしたかを確かめることが「検証」です。そもそも仕事自体が正しいのかを確かめることが「妥当性の確認」です。この二つがそろって初めて適切な管理を行ったといえます。管理とは目的とプロセスを正しく設定し、正しいプロセスからははずれていないかを確認することなのです。
付加価値の高い仕事では特に妥当性確認が重要です。付加価値の高い仕事は目的の設定が難しいからです。こうした仕事では「たぶんこうかな?」と仮説を立て、実行していきながら目的やプロセスを調整していくことが必要です。そこで妥当性確認が特に重要になるのです。
仕事自体が正しくないとすべての努力がムダになります。経営学者のP.F.ドラッカーも「間違った仕事を見事にやり遂げる」と皮肉交じりにいっています。目的やプロセスが誤った仕事に経営資源(ヒト・モノ・カネ)を投入しても成果はあがりません。ですから、仕事の早い段階から「目的は適切か?プロセスは適切か?前提条件は変化していないか?勘違いしていた事情はないか?」といったことを自問自答しなければならないのです。
検証とは精度の高い確認のことですが、そもそも妥当性を欠いた仕事の出来栄えを厳密に確認することは無意味です。仕事の妥当性が確認されているからこそ検証することに意味があるのです。妥当性確認と検証の二つが揃ってこそ適切な管理が行えるのです。
浅沼 宏和