浅沼宏和ブログ

2020.08.27更新

 トラブルなどに関連して「苦情」と「クレーム」という言葉あります。どちらも同じような意味だと思われがちですが、実は「苦情」と「クレーム」では意味が違います。その違いは英語にするとよくわかります。

「苦情」(complaint)とは相手に対して不平や不満を表明することです。これに対し、「クレーム」(claim)とは自らの権利を主張して損害賠償などを含めて何らかの対応を相手に要求することです。この二つの意味の違いを理解しておくと、仕事の管理の仕方が違ってきます。

     

 不平・不満を感じることは誰にでもあります。しかし、それが内心に留まる限り外部から知ることはできません。不平・不満は外部に表明されて初めて知ることができるのです。このように外部に表明された不平や不満が「苦情」なのです。ですから「苦情」がないからといって不平・不満がないとはいえません。

 不平や不満をハッキリと口にする人ばかりではありません。普段はほがらかな常連客が、今日に限ってムスッとしていたとします。その態度はもしかすると内心の不満の表れ、つまり「苦情」なのかもしれないのです。ビジネスでは口では明確に表明されないこのような「苦情」が重要な意味を持ちます。こうした微妙な「苦情」を放置すると、後々大きなトラブルに発展することもあります。

 「クレーム」とは「苦情」の段階を超えて不満がトラブル化した状態です。相手から何らかの要求を突き付けられ、それに対する対応を迫られている状態が「クレーム」です。「クレーム」を受けた場合、何らかの行動が必要になります。それに手間や費用がかかります。場合によってはビジネスそのものに大きな影響が出る可能性もあるのです。

 つまり、内心の不満よりは「苦情」が、「苦情」よりも「クレーム」がより深刻です。そして、「クレーム」を防ぐには「苦情」の段階で食い止めること、さらにはっきり口にされた「苦情」を減らすには表情や態度などからうかがえるかすかな「苦情」を察知することが大切です。「クレーム」を受けることの少ない人、会社は常日頃からかすかな「苦情」に注意を払っているものです。

 ドラッカーは「良い工場は静かで退屈だ」と述べています。すべてが予測され、手順やルールがしっかり守られているため問題が起きないということです。しかし、どれほどしっかりとした管理が行われていても、「苦情」や「クレーム」をゼロにすることは難しいものです。状況は常に変化していますから、従来のやり方ではうまくいかなくなることがあるからです。また、想定外の事態が起きることもありえます。

 しかし、「苦情」と「クレーム」を意識して使い分け、「苦情」=外部に表れた不満、「クレーム」=要求を伴う不満と区別するとリスクマネジメントがしやすくなります。そして、わずかな「苦情」を見つけ、対処することを習慣化すれば、より大きな「苦情」、「クレーム」を防ぐことができるのです。「クレーム」をゼロにするためには、かすかな「苦情」の段階で発見し、解決することが大切です。

投稿者: 株式会社TMAコンサルティング

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