リンダ・グラットンの「ライフシフト」がベストセラーとなって以来、「人生100年時代」という言葉が日常用語になりました。
この本のポイントは長寿化のリスクについて指摘したことです。長命化では、学業の時代、仕事の時代、引退後の時代といった従来までの画一的な3つのステージではなく、個人のライフスタイルに合わせた多様なステージの組み合わせが当たり前になるというものでした。
ところが、多くの人はこの長寿化のリスクに対処しておらず、何らの備えをしないままで年を重ねているといいます。グラットンはこうした時代に合って、自らの生き方を主体的に決定し、行動していくことの大切を指摘したということができます。
ライフシフトの時代において、マルチステージに対応していくためには目に見えない三つの資産が重要になると言います。それが、生産性資産、活力資産、変身資産です。三つの資産はそれぞれ、仕事で成果をあげる能力、肉体的・精神的なコンディション、変化に対応する強みと言い換えることができると思います。
こうしたライフシフトの時代には、「ワークライフ・バランス」という言葉が適切ではなくなってきます。ワークライフ・バランスとは「仕事を充実させるためには私生活を充実させることが大事だ」という考え方です。オンとオフの切り替えのメリハリをつけようということだと言えます。
しかし、ワークライフ・バランスという言葉は肉体労働やマニュアルワークという、いわゆる“9時から5時まで”の仕事を前提とした発想です。この前提は知識労働化した社会には当てはまりません。知識労働は9時から5時までの仕事とは性質が異なるからです。
例えば、仕事上のアイディアが就寝中、入浴中、散歩中などプライベートな時間帯に思い浮かぶことがあると思います。未知の領域になるほどこうした傾向が強まります。知識労働とは、ある意味では24時間労働という性格を持っています。そして、現代社会では大きな付加価値は知識労働で生じるようになったのです。
こうした時代では仕事とプライベートの関係を見直すことが必要になります。それが「ハイブリッド・ワークライフ」というコンセプトです。ハイブリッド・ワークライフは仕事とプライベートに明確な境界線を設けず、仕事においては楽しみを見つけ、プライベートにおいては能力向上と精神・肉体の活性化を実現するという考え方を表現したものです。
このコンセプトについて、これから詳しくご紹介していきたいと思います。