10月6日に拙著「ドラッカーに学ぶ『ハイブリッドワークライフ』のすすめ」が刊行されました。本書は静岡県内の公立高校全95校の図書館に収蔵されます。
ここ5、6年、静岡県の公立小中高の教員向けのマネジメント研修を行ってきたため、本書の執筆に際しては、高校生や大学生にとって有益な物の見方を提供することを一つの指針としておりました。
実は、学校教育の基本的な考え方は、1996年から変わっていません。その考え方とは、子供一人一人の「生きる力」をはぐくむことです。具体的には、次のように定められています。
「‥‥いかに社会が変化しようと、自分で課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、行動し、よりよく問題を解決する資質や能力など自己教育力」(1996年中教審答申)が重要とされ、その方針が保持され続けているのです。
文科省では、それをまとめて「生きる力」ないし、「生き抜く力」と表現しているのです。ですから、学校の先生から「生きる力」という言葉が出ることが多いのです。
ところが、現実には「自ら考え行動する」力を持つ人が多数派にはなっていません。本書では、主体的に行動する習慣を持たないことは、現在の日本を取り巻く厳しい状況を生き抜くことを難しくするという前提を置いています。
また、他人と激しく競争することを望まなくても、自らの置かれた制約条件の中でよりよい生活を築くための努力は必要だという考え方をとっています。
ドラッカーのマネジメントの観点では、「生きる力」とは社会で成果をあげる力のことです。成果をあげることで社会における自分の価値がより大きくなるのです。
成果をあげるためには主体的な行動の習慣が必要です。自分の頭で考え、行動の方向を決め、努力することが不可欠なのです。
厳しい社会環境にあっては、「努力をするのは損だ」、「ほどほどの生活を送れればいいから頑張りたくない」という物の見方は危険です。努力しなければリスクは高まる一方です。
自分の置かれた状況の中での努力はだれにとっても大切なのだ、ということを本書の事例を通じてお伝えできればと考えています。