2024.04.15更新

 トヨタ生産方式を一言でまとめると「ムリ・ムラ・ムダ」の排除です。そして、最も基本となるのがムダをなくすことです。前回は7つのムダ(加工・在庫・作りすぎ・手待ち・動作・運搬・不良;“飾って豆腐”)について説明しました。そして、作りすぎが最も問題であることを見てきました。今回は、「ムラ」について説明したいと思います。

 仕事には忙しい日があったり、比較的暇な日があったりするものです。忙しい日に合わせて人員・設備の体制を整えると暇な日には稼働率が低くなってしまいます。逆に、少ない人員・設備の体制でスト忙しい日には仕事が回らなくなってしまいます。ムラとは目的に対して手段が大きすぎたり、小さすぎたりする状態といえます。いろいろなものがバラついている状況がムラになります。

 たとえば、ムラを四つの視点から考えることもできます。

 Man : 技能のバラつき

 Machine : 設備の性能のバラつき・ボトルネック

 Material : 材料・部品のバラつき

 Method : 方法のバラつき

 特に仕事量のバラつきをなくすことを「平準化」といいます。特定の人、設備、時期に作業が集中してしまう状況は不効率や不具合などさまざまな問題のタネになります。そして平準化においてポイントとなるのが「多能工化」です。カンタンに言うといろいろな仕事ができる人を増やすということです。仕事はできる人に集中しがちです。すると特定の人はとても忙しいのにその他の人は手が空いているといった状況が生まれます。これでは全体の成果は大きくなりません。

 トヨタ生産方式では多能工化が重視されています。一人が一つの業務しかこなせないようですとムラが生じます。しかし、一人が複数の仕事をこなせる能力があれば人の配置を柔軟に行えます。忙しいエリアに多くの人員を割り当てることが可能になるのです。最近では多能工化の方法がサービス業などにも取り入れられています。

 たとえば旅館業には主にフロント業務、客室業務、厨房業務、レストラン業務の四つがありますが、それぞれの業務の集中する時間帯が異なります。星野リゾートでは従業員に四つの業務すべてをこなせるようにすること、つまり多能工化することで生産性を大幅に引き上げることに成功しました。働く人の拘束時間も大幅に減り、顧客サービスもより充実するようになったそうです。流通業のヤオコーやクイーンズ伊勢丹なども多能工化により一人がレジ、総菜づくり、品出しの複数業務を行うようにしたところやはり生産性が劇的に改善したとのことです。

 多能工化を実現するカギが「標準化」です。仕事を誰にでもできるような手順に改め、それを共有することで誰が担当しても同じ仕事の品質になるようにするのです。標準化に取り組むと最初はかえって効率が落ちますが、長い目で見ると組織全体の成果が大きくなるのです。標準化はムダをなくすこととも深く関係しています。ムダをなくすこと、平準化や標準化は言われてみれば当たり前の話ですが、なかなか意識的には行われていないものです。「言うは易く行うは難し」というテーマです。

 

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投稿者: 株式会社TMAコンサルティング

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