問題と課題はどちらも「解決するべきこと」といった意味の言葉です。この言葉の意味の違いは普段あまり意識されることはありません。しかし、多くの人は無意識にこの言葉の違いを感じ、使い分けているのです。たとえば、得意先からクレームがあった時、どちらの言葉を使うでしょうか。ほとんどの人は、「問題が起きた」と表現するでしょう。「課題が生じた」という人は少ないのではないでしょうか。つまり、多くの人はトラブルが起きた時には「問題」という言葉の方がしっくりすると感じているのです。
では、「課題」はどんな場合に使う言葉でしょうか。例えば、オリンピックなどでの活躍を目指しているスポーツ選手にインタビューをする場合、現在の練習の取り組み状況を聞き、次に「今後の課題は?」と尋ねる場合が多いでしょう。この時に、「問題」という言葉を使う人は少ないと思います。ここで質問されていることは、今抱えているトラブルではなく、自分自身がよりレベルアップするために必要と考えていることは何かということです。つまり、「課題」とはよりよくなることに関係する言葉なのです。このように私たちは、悪い文脈において「問題」という言葉を使い、良い文脈では「課題」という言葉を使っているのです。
多くの場合、「問題」という言葉は正しくない状態を示すために使われます。「正しくないことが起きた」、つまり、正常(あるべき姿)との間にギャップがある場合に使われるのです。そして、「課題」は、「どうすればよりよくなるか」、つまり、理想(ありたい姿)との間のギャップを明らかにする場合に使われるのです。
「問題」は正常とのギャップですから、本来、そのような状態が起きないようにしなければいけません。つまり、「問題」はゼロにすることが望ましいのです。そのためには仕事の目的・プロセス・手順などを明確にし、そこからズレていないか常に気を配ることが必要です。それが仕事を管理するということなのです。仕事を明確にしておけば「問題」が小さいうちに発見することができます。仕事のできる人は問題が小さいうちに見つけ、即座に対処しているので大きなトラブルになることが少ないのです。逆にトラブルによく見舞われる人は目的や手順があいまいな状態で仕事をしている可能性があります。そして、「課題」は理想とのギャップです。成長するためには「課題」が必要なのです。「課題」がなければ何を目指して行動すればよいかわからないからです。「課題」がないという状態は望ましくありません。「問題」はゼロにすること、「課題」は適切に設定することが大事なのです。
しかし、「テストの問題」という場合の「問題」はトラブルのことではありません。良い意味でも悪い意味でもなく中立的な意味です。言葉の意味は状況によって変化します。「問題」という言葉は「課題」とセットで考えることでトラブルのような意味になるのです。ここで解説した「問題」と「課題」の意味の違いは、仕事や私生活のマネジメントを行う際に使い分けると便利でしょう。