リンダ・グラットンの「ライフ・シフト」では今後、生産性資産、活力資産、変身資産の三つが重要になるとされています。
先進国の多くの人の平均寿命は今後、100年を超えてくるそうです。その場合、人生のステージが複雑化します。職業人生にも複数のステージがあるのは当たり前ですし、子育てや介護などによって仕事から一歩引く時期が出てくるのも当たり前になります。夫婦共働きの家庭、子供のない家庭、一人親、単身者といったさまざまなライフスタイルも前提にしなければなりません。
こうした「ライフシフト」の時代に合って、まず大切なのは暮らしていくためのお金を確保することです。グラットンはお金に代表される目に見える資産がまず大事と言います。その上で、目に見えない資産の重要性がどんどん高まると考えました。それが、生産性資産、活力資産、変身資産なのです。
生産性資産とは、スキル・経験、優秀な仕事仲間、よい評判を指します。これらは仕事で結果を出すためには欠かせないものばかりです。
活力資産とは、健康、大切な友達や家族、バランスの良い生活などのことです。これらが欠けると日々の生活から活力が失われてしまいます。
変身資産とは、アイデンティティ、新しい情報をもたらすネットワーク、オープンマインドのことです。変身資産は人生100年時代のマルチステージに対応するために必須の資産なのです。
人は誰でも「私はこういう人」という自己認識(アイデンティティ)を持っています。しかし、新しいステージへと移行する際にはその自己認識を変える必要がでてくるのです。では、アイデンディティティはどのような原理で変化するのでしょうか。
それは、他者との違いを意識することでもたらされるのです。様々な人と自分はどう違うのかを考えることで、初めて自分の像が浮かび上がるのです。様々な人との違いを考え続けることで、その一部を差し替えることが可能になります。状況に合わせて自分のアイデンティティの一部を変更することがライフシフトには必要なのです。
変身資産の一つ、新しい情報をもたらすネットワークとは、ワンクッション置いたつながりのある人たちやコミュニティをたくさん持っていることです。仲の良い人たち、つながりの深い人たちから新たな視点や情報がもたらされることは多くありません。全く新しい視点や情報はワンクッション置いた関係性からもたらされるのです。
変身資産の一つ、オープンマインドは今説明したアイデンティティ、ネットワークのいずれにも関係しています。新しいことに対してオープンであることが新しいステージに進むための必須の条件なのです。
人生がマルチステージ化することで変身資産は重要な意味を持つようになりました。ハイブリッドワークライフでは、私生活と仕事を区別しません。そうすることで、多様な人との違いを感じ、新しいネットワークが構築でき、オープンマインドになれるのです。