昨年のベストセラー『嫌われる勇気』の抄録です。特にビジネスマンに役立ちそうなところを中心にまとめてみました。
アドラーの特徴は、人の行動には必ず「目的」があるという前提に立って、心の在り方を変えるための視点をわかりやすく提示してくれることにあります。
正しい努力の方向性を考えるのに役に立つ物の見方だと思います。
『嫌われる勇気』抄録
1. われわれは何かしらの「目的」に沿って生きている。
2. 過去の原因ではなく今の目的を考える。
3. 例えば、「外に出たくない」から「不安」と言う感情を作りだしている。
4. 「怒り」の感情も出し入れ可能な道具。
5. 「トラウマ」の存在は明確に否定する。
6. 経験によって決定されるのではない。経験に与える意味によって決定する。
7. 問題は「なにがあったか」ではなく「どう解釈したか」にある。
8. 変わることの第一歩は知ることにある。
9. 答えは誰かに教えてもらうものではなく自らの手で導き出すもの。
10. 今のあなたが不幸なのは自分自身が「不幸であること」を選んだから。
11. 問題は自分の性格ではなく世界観にあると考える。
12. あなたのライフスタイルを自ら選んだものである。だから再び自分で選び直すことも可能なはず。
13. あなたが変われないのは「変わらない」と決心しているから。
14. 新しいライフスタイルを選ぶと未来が見通せずに不安になる。だから多くの人は色々と不満があっても「このままの私」でいることのほうが楽だし安心と考え「変わらない」ことを選ぶ。
15. 多くの人には「幸せになる勇気」が足りない。
16. 最初にやるべきことは何か。それは「今のライフスタイルをやめる」という決心。
17. 「もし○○だったら」と可能性の中に生きているうちは変われない。変えない人は変えないことで「やればできる」という可能性を残そうと思う。
18. 自分の短所ばかり気になる人は「自分を好きにならないでおこう」と決心している。
19. 実行しなければ可能性の中に生きることができる。
20. 自分の短所ばかり見つめる人は対人関係で傷つくことを過剰に恐れている。「目的」を「他人との関係の中で傷つかないこと」と決めている。
21. 人間の悩みはすべて対人関係の悩みである。
22. 個人だけで完結する悩み、いわゆる“内面の悩み”などというものは存在しない。
23. われわれを苦しめる劣等感は「客観的な事実」ではなく、「主観的な解釈」である。
24. 人は無力な状態から脱したいと願う普遍的な欲求を持っている。*優越性の追求
25. 一歩踏み出す勇気をくじかれ「状況は現実的な努力で変えられる」という事実を受け入れられない人たちがいる。なにもしないうちから「どうせ自分なんて」とあきらめてしまう。彼らは劣等コンプレックスを抱いている。
26. 劣等コンプレックスとは自らの劣等感を言い訳に使い始めた状態。
27. *見かけの因果律 :本来は何の因果関係もないところに、あたかも重大な因果関係があるかのように自らを説明し、納得させてしまう。
28. 「AだからBができない」と言う人は、「Aさえなければ、わたしは有能であり価値があるのだ」と暗示しようとしている。
29. 劣等感を長く持ち続けられる人はいない。だから人は欠如した部分を埋めようと努力する。その勇気がない人は劣等コンプレックスに陥る。
30. 例えば「学歴がないから成功できない」と考える人は「もしも学歴さえ高ければ自分は容易に成功できたのに」と自らの有能さを暗示する。そして「本当の私は優れているのだ」と納得しようとしている。
31. *優越コンプレックス :あたかも自分が優れているかのように振る舞い、偽りの優越感に浸ること。
32. 派手なブランド品を身に付けたり、有名人とのつながりを自慢する人などには優越コンプレックスがあるのかもしれない。
33. 権威の力を借りて自分を大きく見せている人は、他人の価値観に生き、他人の人生を生きている。
34. わざわざ言葉にして自慢している人は、むしろ自分に自信がない。
35. *不幸自慢 :自慢げに病気や不遇な生活を語ること。劣等感を裏返しにして特異な優越感に至るパターン。不幸であることで「特別」であろうとし、不幸という一点において人の上に立とうとする独特なコンプレックス。
36. 健全な劣等感は他人との比較の中ではなく「理想の自分」との比較から生まれる。
37. 今の自分よりも前に進もうとすることに価値がある。
38. 競争や勝ち負けを意識すると必然的に生まれてくるのが劣等感。
39. 社会的成功をおさめながらも幸せを実感できない人が多いのは彼らが競争に生きているから。
40. 相手の言動に本気で腹が立った時には、相手が「権力争い」を挑んできていると考える。相手は勝つことによって自らの力を証明したいと考えている。
41. 怒りはコミュニケーションの一形態だが、怒りという道具に頼る必要はない。
42. われわれには言葉がある。言葉によってコミュニケーションが取れる。言葉の力、論理の力を信じる。
43. 誤りを認めること、謝罪の言葉を述べること、権力争いから降りること、これらはいずれも「負け」ではない。
44. 他人を敵とみなし、仲間と思わない人は「人生のタスク」から逃げている。
45. *人生のタスク :【行動面の目標】 ①自立する ②社会との調和 【心理面の目標】 ①「私には能力がある」との意識 ②「ひとびとは私の仲間である」との意識
46. 仕事の対人関係は最もハードルが低い。成果というわかりやすい共通目標があるため、少しくらい気が合わなくても協力できるし、協力せざるを得ない。
47. 学校や職場のような「場」があれば関係は構築しやすい。
48. 友達や知り合いの数には何の価値もない。考えるべきは関係の距離と深さ。
49. アドラーは相手を束縛することは認めない。相手が幸せそうにしていたら、その姿を素直に祝福できる。それが愛。
50. 束縛とは相手を支配しようとする心の表れであり、不信感に基づく考え。
51. 恋愛関係、夫婦関係には「別れる」という選択肢があるが、親子関係はそうはいかない。親子関係からは逃げられない。
52. Aさんを嫌う場合、あなたには「Aさんのことが嫌いになる」という目的が先にあり、その目的にかなった欠点を後から見つけ出そうとする。それをAさんとの対人関係を回避するために行っている。
53. さまざまな口実を設けて人生のタスクを回避しようとする事態を指して「人生のウソ」という。
54. 目的論の立場に立って自らの人生を、自らのライフスタイルを自分の手で選ぶ。
55. 他人からの承認を求めるべきではない(認めてもらおうと思わない)。
56. 賞罰教育の結果生まれるのは、「ほめてくれなければ適切に行動しない」「罰する人がいなければ不適切な行動もとる」という誤ったライフスタイル。
57. われわれは他人の期待を満たす必要はない。他人からの承認を求め、他人からの評価ばかりを気にしていると、最終的には他人の人生を生きることになる。
58. 他人はあなたの期待を満たすために生きているのではない。
59. われわれは「これは誰の課題なのか?」という視点から自分の課題と他人の課題とを分離していく必要がある。
60. あらゆる対人関係のトラブルは、他者の課題に土足で踏み込むことで起きる。
61. 誰の課題かを見分ける方法はシンプル。「その選択によってもたらされる結末を最終的に引き受けるのは誰か?」という視点。
62. 自分を変えることができるのは自分しかいない。
63. たとえば「引きこもり」は本人が解決するべき課題で親が介入することではない。ただし、何らかの援助は必要。子供が窮地に陥った時に、素直に親に相談しようと思える信頼関係が築けているかがポイント。
64. 自分にできるのは「自分の信じる最善の道を選ぶこと」。しかし、その選択について他人がどのような評価を下すのかは他人の課題であり自分にはどうにもできない。
65. 例えば、上司がたびたび怒鳴りつけ、がんばりを認めてくれず、まともに話も聞いてくれないと言う人がいる。しかし、上司に気に入られ、認めてもらうことは最優先の仕事ではない。その人は「うまくいかない仕事」の言い訳として『嫌な上司』の存在を必要としている。
66. 課題の分離ができれば上司がどれほど理不尽な怒りをぶつけようと、自分には関係がないとわかる。理不尽な感情は上司が自分の問題として始末するべき課題であるとわかる。すり寄る必要はないし、自分を曲げてまで頭を下げる必要はない。
67. 他人の課題には介入せず、自分の課題には誰ひとりとして介入させなければよい。
68. 課題の分離は対人関係の最終目標ではなく、その入り口。
69. アドラー:「困難に直面することを教えられなかった子供は、あらゆる困難を避けようとするだろう」。
70. 他者の課題に介入しようとすることは自己中心的発想。
71. 自由とは他者から嫌われることである。誰かから嫌われているということは自由を行使していることである。自由にはコストが伴う。
72. 他者の評価を気にかけず、他者から嫌われることを恐れず、承認されないかもしれないというコストを支払わない限り、自分の生き方を貫くことはできない。
73. 幸せになる勇気には「嫌われる勇気」も含まれている。
74. 対人関係のカードは常にわたしが握っている。