新型コロナの流行が一段落したため、今後、税務調査が増える見込みです。しかも、以前に比べ、より調査内容が深まってきているようです。そこで、税務調査について改めて整理したいと思います。
簡単に言うと税務調査とは税務申告における不正、誤謬、もしくは見解の相違について確認する行為です。人はミスをするものですし、考え方の違いが起きるのも普通のことです。ですから、誤謬や見解の相違はそんなに心配する必要はありません。誤謬は直せばよいわけですし、見解の相違は当局としっかりと議論をして合意すればよいのです。
しかし、不正は別です。税務上の不正は「脱税」と呼ばれる非違行為です。その金額が大きくなれば刑事罰が科され、ニュースとなって社会的信頼が失墜する可能性もあります。「これぐらい構わないだろう」「このやり方なら脱税じゃない」と安易に考え、それが税務調査で大きな問題になることが多いようです。“賢い節税”のつもりが「脱税」とみなされないよう注意しなければなりません。
1 税務は実質課税。実態と離れた形式は「不正」とみなされやすい
税務上の論点は白黒が比較的はっきりしている場合よりも、その中間の「グレー」な領域がたくさんあります。修繕費などはその典型で、実際に「これは経費になりますか?」と聞かれる修繕の多くは「黒に近いグレー」なケースであるため、資本的支出と判断されやすい状況にあります。
また、法律上の形式が整っているからといって安心できません。たとえば親族を役員に任命して多額の報酬を支払っているのに、親族に勤務実態がないため故意による所得の過少申告とみなされるケースは多数あります。「本当は税金を少なくすることが目的」の行為の多くが“グレー”といえます。
2 税務署は事前に下調べをしている。
コロナの影響もあったため、ここ数年は税務調査が比較的少なめでした。そのため、今後、税務調査が増えるといわれています。また、事前調査が以前よりも徹底されているともいわれています。
実際、ある税務調査の際に、事前にブログや SNS などを詳しく調べ、会計処理との矛盾点がないかを細かくチェックしているようです。
3 小細工をするのは逆効果
税金を安くしようと小細工をした場合、それが発覚するとダメージが大きくなりがちです。ある事業者は、通常使う銀行口座とは別に遠方の銀行に秘密の口座を設けていましたが、調査で簡単に発覚し、「脱税」と認定されました。
また、別の事業者は調査の冒頭で「午後に貸金庫を調査します」と言われたため、午前中に人を銀行にやって金庫の中身を引き上げたのですが、貸金庫の入退室の履歴からその行動がバレて、悪意を認定されたこともありました。
さらに、SNS などの事績を消した場合には、税務署が業者に内容の復元を依頼すると 1 週間程度で削除した内容がわかってしまいます。小手先の細工はかえってダメージが大きくなると考えてください。