2024.08.28更新

  今月はドラッカーの名言から、経営に関するものをご紹介します。

1. 成果を生み出すために、既存の知識をいかに有効に適用するかを知るための知識が、マネジメントである。

2. 企業の目的が顧客の創造であることから、企業には二つの基本的な機能が存在する。すなわち、マーケティングとイノベーションである。この二つの機能こそ起業家的機能である。

3. 強みは企業によって異なる。それはいわば個性である。しかし、あらゆる企業、あらゆる組織が持つべき共通の強みがある。イノベーションの能力である。

4. イノベーションは市場に焦点を合わせなければならない。製品に焦点を合わせたイノベーションは新奇な技術を生むかもしれないが、成果は失望すべきものとなる。

5. すでに発生していながら、その経済的な衝撃がまだ現れていない変化がイノベーションの機会となる。

6. マーケティングは顧客の現実・欲求・価値からスタートする。「われわれの製品サービスにできることはこれである」ではなく、「顧客が価値ありとし、必要とし、求めている満足はこれである」という。

7. 主力製品に際立った個性がなく、市場でリーダーシップを握っているという確証がないのなら、売上や利益が順調なうちに手を打たなければならない。

8. 顧客と市場を知っているのはただ一人、顧客本人である。したがって、顧客に聞き、顧客を見て、顧客の行動を理解して初めて、顧客とはだれであり、何を行い、どうやって買い、何を期待し、何に価値を見出しているかを知ることができる。

9. 企業が自ら生み出していると考えるものが重要なのではない。特に企業の将来や成功にとって重要なのではない。顧客が買っていると考えているもの、価値と考えるものが重要である。それらのものが、事業が何であり、何を生み出すかを規定し、事業が成功するか否かを決定する。

10. 既成の事実が、事業にとっていかなる意味を持つか、いかなる機会を作り出すか、いかなる脅威をもたらすか、いかなる変化を要求するか、いかなる変化を可能にし、いかなる変化を有利とするかを問わなければならない。

11. イノベーションは理論的な分析であると同時に知覚的認識である。外に出て、見て、問い、聴かなければならない。


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投稿者: 株式会社TMAコンサルティング

2024.08.28更新

  今月はドラッカーの名言から、仕事に関するものをご紹介します。

1. 仕事を生産的なものにするためには、成果、すなわちアウトプットを中心に考えなければならない。技能や知識などインプットからスタートしてはならない。技能・情報・知識は道具に過ぎない。

2. 他の者が行うことについては満足もありうる。しかし、自らが行うことについては責任があるだけである。自らが行うことについては常に不満がなければならず、常によりよく行おうとする欲求がなければならない。

3. 成功のカギは責任である。自らに責任を持たせることである。あらゆることがそこから始まる。大事なものは地位ではなく、責任である。責任ある存在になるということは、真剣に仕事に取り組むということであり、仕事にふさわしく成長する必要を認識することである。

4. まず果たすべき責任は、自らのために最高のものを引き出すことである。人は自らが持つものでしか仕事ができない。しかも、人に信頼され、協力を得るには、自らが最高の成果をあげていくしかない。

5. 普通の人であれば、実践的な能力は身に着けられる。卓越はできないかもしれない。卓越するには特別な才能が必要である。だが、成果をあげるには、人並みの才能があれば充分である。

6. 強みを生かす者は、仕事と自己実現を両立させる。自らの知識が組織の機会となるように働く。貢献に焦点を合わせることで、自らの価値を組織の成果に変える。

7. 組織に対する自らの貢献を問うことは、いかなる自己啓発が必要か、いかなる知識や技能を身に着けるか、いかなる強みを仕事に適用するか、いかなる基準をもって自らの基準とすべきかを考えることである。

8. 1 人 1 人の自己啓発が、組織の発展にとって重要な意味を持つ。それは組織が成果を上げるための道である。成果に向けて働くとき、人は組織全体の成果水準を高める。彼ら自身およびほかの人たちの成果水準を高める。

9. 自らの強み、仕事のやり方、価値観がわかっていれば、チャンスを与えられた時、職を提供された時、仕事を任された時に、「私がやりましょう」、「私のやり方はこうです」、「この仕事はこうすべきです」、「他の組織や人との関係はこうなります」、「この期間内にこれこれのことをやり遂げます」と言える。


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投稿者: 株式会社TMAコンサルティング

2024.07.18更新

  今月はドラッカーの名言から、変革に関するものをご紹介します。

1. 未来を語る前に、今の現実を知らなければならない。現実からしかスタートできないからである。

2. 未来に何かを起こすには勇気を必要とする。その場しのぎの仕事に身を任せていたのでは、未来は作れない。未来についてのビジョンで必ず失敗するものは、確実なものリスクのないもの失敗しようもないものである。

3. 明日は必ず来る。そして、明日は今日とは違う。今日の最強企業といえども、未来に対する働きかけを行っていなければ苦境に陥る。

4. イノベーションに成功する者は保守的である。保守的たらざるをえない。
彼らはリスク志向ではない。機会思考である。

5. 事業においてリスクは最小化しなければならない。だが、リスクを避けることに囚われると、最大にして最も不合理なリスク、すなわち、無為のリスクを負うことになる。

6. 事業活動とは変化を起こそうとする経済活動である。それは、今、座っているイスの足をノコギリで引くことに似ている。現在のリスクをさらに危険なものにし、あるいはまったく新しいリスクを生み出そうとする。

7. リスクを行動の基盤にしてはならない。リスクは行動に対する制約にすぎない。

8. 変化への抵抗の裏にあるものは無知である。未知への不安である。しかし、変化は機会とみなすべきものである。
変化を機会としてとらえたとき、はじめて不安は消える。

9. イノベーションとは、既存の知識・製品・顧客ニーズ・市場など、すでに存在するものを、はるかに生産的な一つの全体に発展させるため、小さな欠落を発見し、その提供に成功することである。

10. 成功した起業家に共通するのは性格ではない。体系的にイノベーションを行っていることである。
イノベーションは起業家に特有の機能である。それは既存企業、社会的機関、小さなベンチャーであっても変わらない。

11. すでに起きた未来は組織の外にある。それは、社会・知識・文化・産業・経済構造における変化である。一つの傾向の変化ではなく変化そのものである。
パターンの内部における変化ではなく、パターンそのものの断絶である。

12. 人口変化こそ、市場・社会的圧力・経済的機会にとって基本となる動きである。


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投稿者: 株式会社TMAコンサルティング

2024.06.13更新

 今月はドラッカーの名言から、経営に関するものをご紹介します。

1. まず、経営者が行うべきことは、自らの組織があげるべき成果を明確にすることである。
これは‥‥最も難しく、最も重要な仕事である。

2. あらゆる組織が自らについての定義をもたなければならない。
明快で一貫性があり、焦点の定まった定義が組織にとって強力なよりどころとなる。

3. 明日の組織のモデルはオーケストラである。楽団員のすべてが専門家である。
オーケストラはすべての楽団員が同じ楽譜を持って演奏をする。

4. 事業の定義は組織が目標を達成した時に陳腐化する。
目標を達成した時はお祝いをするべき時ではなく、事業の定義を見直すべき時である。

5. 重要なことは明日何をするかではない。不確実な明日のために、今日何をするかである。

6. 企業の目的は企業の外にある。企業は社会の機関であり、目的は社会にある。
したがって、事業の目的として有効な定義は一つしかない。“顧客の創造”である。

7. 顧客は自らが求めるもの、必要とするもの、期待するものにしか関心を寄せない。
顧客の関心は常に「この製品、この会社は自分に何をしてくれるか?」である。

8. 最も重要な情報は顧客ではなく、非顧客(今、顧客ではない者)についてのものである。
変化が起きるのは常に非顧客の世界においてである。

9. 市場において目指すべき地位は“最大”ではなく、“最適”である。

10. 戦略計画とは何か。 それはリスクを伴う企業家的な意思決定を行い、その実行に必要な活動を体系的に組織し、それらの活動の成果を期待したものと比較測定するという連続したプロセスである。

11. あらゆる企業が自らの強みを知り、そのうえで戦略を立てる必要がある。
‥‥強みは常に具体的であって特殊である。

12. 他社はうまくできなかったが、わが社はさしたる苦労なしにできたものは何かを問わねばならない。同時に、他社は苦労なくできたが、わが社はうまくできなかったことを問わねばならない。

13. マーケティングの理想は販売を不要にすることである。マーケティングが目指すものは、顧客を理解し、製品・サービスを顧客に合わせ、おのずと売れるようにすることである。


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2024.06.13更新

 今月はドラッカーの名言から、仕事に関するものをご紹介します。

1. 成果をあげる人とあげない人の差は才能ではない。いくつかの習慣的な姿勢と基礎的な方法を身に着けているかどうかの問題である。

2. 問題の解決によって得られるものは、通常の状態に戻すことだけである。成果そのものは機会の開拓によってのみ得ることができる。

3. 成果をあげるには、自らの果たすべき貢献を考えなければならない。手元の仕事から顔をあげて、目標に目を向ける。組織の成果に影響を与える貢献は何かを問う。そして、責任を中心に据える。

4. 日常化した毎日が心地よくなった時こそ、違ったことを行うように自らを駆り立てる必要がある。

5. だれもが自分の強みをよくわかっていると考えている。しかし、たいていは間違っている。わかっているのはせいぜい弱みである。

6. 目標は難しいものにしなければならない。背伸びをさせるものでなければならない。だが、可能でなければならない。
不可能なことを目指したり、不可能なことを前提とすることは野心的と呼ぶに値しない。単なる無謀である。

7. 外の世界に目を向けることで、自らの専門分野だけではなく、組織全体の成果に注意を向けるようになる。
成果が存在する唯一の場所である外の世界に注意を向けるようになる。

8. 成長に最大の責任を持つ者は本人であって組織ではない。自らと組織を成長させるためには、何に集中すべきかを自ら問わねばならない。

9. 昔、ギリシアの彫刻家・フェイディアスはアテネのパンテオン神殿の屋根の彫刻を完成させた。だが、彼の請求書に対してアテネの会計官は支払いを拒み、「彫刻の背中は下から見えない。見えない部分まで彫って請求するとは何事か。」といった。
それに対しフェイディアスは答えた。「そんなことはない。神々が見ている。」

10. われわれは気質と個性を軽んじがちである。だが、それらのものは訓練によって容易に変えられるものではないだけに、重視し明確に理解することが必要だ。

11. 貢献に焦点を合わせることで、コミュニケーション、チームワーク、自己啓発、人材育成という、成果を上げるうえで必要な基本的能力を身につけることができる。


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投稿者: 株式会社TMAコンサルティング

2024.04.15更新

 1. 交渉‥相互に譲歩してよりよい合意を目指すこと *説得‥理由を納得させること

 2. 交渉とは問題解決プロセスである *よい交渉者はよい問題解決者

 3. 最初に“ふっかける”必要がある →こちらが譲歩する余地を残すのが重要

 4. 交渉は双方の第一案の中間で合意されやすい *最初の提案が目安になるので重要

 5. 相手の最初の提案にイエスというのは不利 *相手には譲歩の余地があることが多い

 6. 手持ちの情報が少なければ最初は相手に提案させるほうがよい

 7. 譲歩するときは必ず見返り(対価)を得るようにする

 8. 質問は交渉を動かすコミュニケーション *相手は自分の発言(答え)に説得される

 9. 交渉決裂の際の最善策(BATNA)を決めておく
  *BATNA=Best Alternative to a Negotiated Agreement

 10. BATNA は交渉の外にある選択肢⇔ボトムラインは交渉の中での受け入れ可能な最低条件

 11. 強い BATNA があれば交渉は有利に運べる

 12. 優れたストーリーを提示できれば交渉は有利に運べる

 13. 自分側の条件、相手側の条件を整理する *情報量が多いほど交渉は有利

 14. 交渉では相手のメンツをつぶさないことが大事 →最後の最後で悩む相手のために小さな譲歩を用意するのは有効

 15. 双方の成果がより大きくなるのが良い交渉

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投稿者: 株式会社TMAコンサルティング

2024.04.15更新

 税務では、金銭以外のモノや権利などを享受した場合、「経済的利益」とみなすことが多いです。例えば、物品を贈られたり低額で譲られた場合、モノやサービスを無償や低額で貸与された場合、債務の免除や借金の肩代わりをしてもらった場合などは経済的利益を受けたものとみなされます。従業員のためを思って使った費用が経済的利益をみなされると従業員に給与を支給したのと同じことになってしまうのです。経済的利益を受けた従業員はその金額に対応する所得税が課されるのです。

 しかし、次のような費用については一定の基準を満たすと非課税の経済的利益として扱われ、所得税がかかりません。非課税の経済的利益とみなされるためには役員など一部の社員だけが享受するようなものであってはいけません。すべての社員に公平に与えられるものであることが必要です。一部の役員だけが旅行に出かけたり、スポーツジムに通うなどすると非課税の要件を満たさないことになります。

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 ある企業から「年末に従業員全員に商品券を配りたい」という相談を受けたことがあります。「構いませんが、その商品券の金額を年末のお給料に加算して所得税を徴収してください」と申し上げたところ、「なぜだ。おかしいではないか。これは給料ではなく“お疲れ様でした”という感謝の気持ちなのだ」と言われました。

 そうした「感謝」をしていけないわけではありません。その感謝には「経済的利益」が伴いますから、その金額分はお給料とみなすというルールになっているだけなのです。税務では「商品券を配る」ことと「特別手当を支払う」ことは所得が増えるという点で同じ意味のものとされています。

 

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投稿者: 株式会社TMAコンサルティング

2024.04.15更新

 トヨタ生産方式を一言でまとめると「ムリ・ムラ・ムダ」の排除です。そして、最も基本となるのがムダをなくすことです。前回は7つのムダ(加工・在庫・作りすぎ・手待ち・動作・運搬・不良;“飾って豆腐”)について説明しました。そして、作りすぎが最も問題であることを見てきました。今回は、「ムラ」について説明したいと思います。

 仕事には忙しい日があったり、比較的暇な日があったりするものです。忙しい日に合わせて人員・設備の体制を整えると暇な日には稼働率が低くなってしまいます。逆に、少ない人員・設備の体制でスト忙しい日には仕事が回らなくなってしまいます。ムラとは目的に対して手段が大きすぎたり、小さすぎたりする状態といえます。いろいろなものがバラついている状況がムラになります。

 たとえば、ムラを四つの視点から考えることもできます。

 Man : 技能のバラつき

 Machine : 設備の性能のバラつき・ボトルネック

 Material : 材料・部品のバラつき

 Method : 方法のバラつき

 特に仕事量のバラつきをなくすことを「平準化」といいます。特定の人、設備、時期に作業が集中してしまう状況は不効率や不具合などさまざまな問題のタネになります。そして平準化においてポイントとなるのが「多能工化」です。カンタンに言うといろいろな仕事ができる人を増やすということです。仕事はできる人に集中しがちです。すると特定の人はとても忙しいのにその他の人は手が空いているといった状況が生まれます。これでは全体の成果は大きくなりません。

 トヨタ生産方式では多能工化が重視されています。一人が一つの業務しかこなせないようですとムラが生じます。しかし、一人が複数の仕事をこなせる能力があれば人の配置を柔軟に行えます。忙しいエリアに多くの人員を割り当てることが可能になるのです。最近では多能工化の方法がサービス業などにも取り入れられています。

 たとえば旅館業には主にフロント業務、客室業務、厨房業務、レストラン業務の四つがありますが、それぞれの業務の集中する時間帯が異なります。星野リゾートでは従業員に四つの業務すべてをこなせるようにすること、つまり多能工化することで生産性を大幅に引き上げることに成功しました。働く人の拘束時間も大幅に減り、顧客サービスもより充実するようになったそうです。流通業のヤオコーやクイーンズ伊勢丹なども多能工化により一人がレジ、総菜づくり、品出しの複数業務を行うようにしたところやはり生産性が劇的に改善したとのことです。

 多能工化を実現するカギが「標準化」です。仕事を誰にでもできるような手順に改め、それを共有することで誰が担当しても同じ仕事の品質になるようにするのです。標準化に取り組むと最初はかえって効率が落ちますが、長い目で見ると組織全体の成果が大きくなるのです。標準化はムダをなくすこととも深く関係しています。ムダをなくすこと、平準化や標準化は言われてみれば当たり前の話ですが、なかなか意識的には行われていないものです。「言うは易く行うは難し」というテーマです。

 

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投稿者: 株式会社TMAコンサルティング

2024.04.15更新

 産業のソフト化が進む中で製造業のノウハウにあまり関心が集まらなくなったように思います。しかし、トヨタ生産方式は製造現場のみならず、サービス業やホワイトカラーの仕事にも適用されるようになっています。そこで、改めてトヨタ生産方式の強みについて整理したいと思います。

 トヨタ生産方式を一言でまとめると「ムリ・ムラ・ムダ」の排除です。そして、最も基本となるのがムダをなくすことです。トヨタではムダには次の 7 種類があるとされています。

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 これらは製造業のみならず、あらゆる業種の現場でのムダを考えるうえで大切です。7つもあると覚えるのは大変ですが、それぞれの頭文字を並べると「か(加工)・ざ(在庫)・つ(作りすぎ)・て(手待ち)・ど(動作)・う(運搬)・ふ(不良)」、つまり『飾って豆腐』となりますから、ぐっと覚えやすいでしょう。

 では、7つあるムダのうちで最大のムダは何でしょうか?この質問をすると、「不良」か「在庫」というお答えが多くあります。現場の方たちにとって最も目につきやすいムダがこの二つなのだということかもしれません。しかし、根本的な問題となるのは「作りすぎ」のムダなのです。

 「作りすぎ」とはせっかく作ったものが売れていない状態です。売れていなければ成果はありません。しかも、作り終えるまでに多くの資源・努力がつぎ込まれています。これらのすべてが価値を生んでいない状態こそが「作りすぎ」なのです。ですから、トヨタは「売れた分だけ作る」という考え方を徹底しているのです。

 また、「作りすぎ」では加工、在庫、運搬のムダが生じます。売れない分を加工、在庫、運搬したことになるからです。しかも、見かけ上は忙しいため、本来、手待ちである状態も隠されてしまいます。いらないもの、成果にならない仕事をすることほどムダなことはありません。

 この考え方は、新製品開発にも当てはまります。「こんな製品を出せばきっと売れるはずだ」と考え、大量に生産し大々的に売り出したものが全く売れないことはよくありますが、これも「作りすぎ」のムダの一種と考えられます。ドラッカーは、それを「間違った仕事を見事にやり遂げる」と表現しています。

 7 つのムダ、特に作りすぎのムダの視点は、仕事の成果が何かを問う姿勢です。仕事は常に最終的な成果に結びつけて行うべきなのです。

 

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2024.04.15更新

 ビジネスとは、単純に言えば資金を投入して利益を得る活動です。ですからコストとリターンという言い方がよく使われます。「これだけの資金を投入した結果、期末の利益はこれだけになった」といった表現はコストとリターンの考え方を反映しています。

 コスト管理の基本となる考え方がコストとリターンです。「これこれの金額(コスト)を使った結果、これだけの見返り(リターン)があった」とか、「業績(リターン)が思わしくないのでコスト削減に取り組もう」といった表現は、仕事の場面で頻繁に使われています。

 また、経営環境の不確実性が高まったため、コストの代わりにリスクという言葉もよくつかわれています。資金の投入にはリスク(危険)が伴います。もし、リスクが高いのであれば、望まれる利益(リターン)はそれなりに大きな金額でなければなりません。逆にリスクが低ければ見返り(リターン)が低くてもその確実性が魅力になります。

 このようにビジネスの世界では、「コストとリターン」、「リスクとリターン」といった考え方が浸透しているのです。

 しかし、世の中の変化がさらに加速したことで、社会が企業に期待する役割はどんどん大きくなっています。CSR、SDGs、ESG投資といったような言葉が日常的に聞かれることになったことは、その表れです。そこで、最近、重要になったのが「インパクト」という視点です。

 米国の新自由主義的なビジネス社会では社会的責任を果たすために資金や労力を使うことは株主利益に反する行為だとずっと考えられていました。「社会に還元するよりも株主に還元せよ」というわけです。

 ところが、企業活動によって公害が発生したり、自然破壊が進んだり、人権侵害が生じたりといった事案が増えるにしたがって、「企業は社会的な責任を果たしていない」という批判が起きるようになりました。その結果、企業には社会に対して与えたインパクト(影響)を説明する責任があるとされ、悪影響を減らし好影響を大きくすることが求められるようになったのです。

 日本では2022年4月以降、東証プライム市場(旧・東証一部)上場企業には国際的なガイドラインに基づいて気候変動への取り組みを説明する義務が課されています。それが下請け企業にも波及してカーボンニュートラルへの取り組みが求められているのです。さらにそれが今後、生物多様性についても求められると思われます。企業は自社の活動が及ぼすインパクトについての説明が求められているのです。

 かといって営利企業がリターンを無視してボランティア活動にはげむことはできません。しかし、社会的責任を無視して企業活動を行うわけにはいきません。企業にはリターンとインパクトとの間でうまくバランスをとることが求められています。

 たとえばサントリーは製品作りに大量の天然水を使用しています。そのため、自社の水使用量に相当する水源地の森林保全活動を行っています。その結果、「サントリーは社会に好影響(インパクト)を与える会社」という印象を与えています。それとは反対に、社会に対する不誠実な行動が明らかとなって評判を落とす企業も続出しています。もはやインパクトを無視してはビジネスが成り立たない時代に入ったといえます。

 

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